給与を上げなくても、給与欄の「書き方」を変えるだけで応募が増えることは珍しくありません。どの媒体でどう見せるか迷ったら、まずはお気軽にご相談ください。
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「求人は出しているのに応募が来ない。給与だって近隣と同じくらいのはずなのに——」。そう感じている採用担当者・店長は少なくありません。ところが原稿を拝見すると、給与欄に「時給900円〜」「月給21万円〜」と、下限だけがぽつんと書かれているケースがとても多いのです。じつはこの「〜(チルダ)」ひとつが、応募をじわじわ減らしています。
給与額そのものを上げるのは簡単ではありません。しかし、同じ給与でも「書き方=見せ方」を変えるだけで応募数は変わります。お金をかけずに今日から直せる、いちばん費用対効果の高い改善が給与欄なのです。
この記事では、東京で20年にわたり幅広い業種の求人広告を扱ってきた求人広告代理店の視点から、求人広告の給与の書き方を採用担当者目線で解説します。「時給900円〜」が応募を減らす理由、法令上守るべき記載ルール、そして応募が増える給与欄への具体的なビフォーアフターまで、順を追ってお伝えします。
この記事でわかること
- 「時給900円〜」の下限のみ表示がなぜ応募を減らすのか(求職者心理)
- 求人の給与記載で必ず守るべき法令ルール(2024年改正・固定残業代の明示)
- 応募が増える給与欄の4つの見せ方(レンジ・モデル月収・固定残業代・額面外情報)
- 給与額は変えずに書き方だけ直すビフォーアフターの原稿例
なぜ「給与欄の書き方」で応募数が変わるのか
求職者は給与欄を「金額の情報」ではなく「安心して働けるかの判断材料」として読んでいます。ここを取り違えると、金額は間違っていないのに応募が来ない、という状態になります。
求職者はスマホで何十件もの求人を並べ、1件あたり数秒で「応募するか・しないか」を決めています。そのとき見ているのは給与の数字だけではありません。「自分がここで働いたら、実際にいくらもらえるのか」「その金額は納得できるか」「募集の内容に嘘はなさそうか」——こうした問いに給与欄が答えられているかどうかで、応募ボタンを押すかが決まります。数字は同じでも、書き方次第で「働くイメージが湧く給与欄」と「不安が残る給与欄」に分かれるのです。
マイナビ「アルバイト就業者調査(2025年)」では、アルバイト探しの必須条件として「自宅から近い」47.5%、「シフトの融通がきく」45.0%が上位に挙がりました。給与はもちろん重要ですが、求職者は金額という1点だけでなく、通いやすさ・働きやすさ・納得感を含めた総合的な「働くイメージ」で応募先を選んでいます。(出典:マイナビキャリアリサーチLab アルバイト就業者調査2025)
この調査が示すのは、給与は「高いか安いか」だけで見られているわけではないということです。だからこそ、給与額を上げる前に給与欄の書き方を見直すほうが、費用をかけずに応募を増やせるケースが多いのです。逆に、金額を上げても書き方が不親切なままでは、その効果は十分に伝わりません。
よくある落とし穴
応募が来ないと「給与が安いのかもしれない」と考え、無理に高い数字を打ち出そうとする担当者がいます。しかし実態とかけ離れた金額を載せると、入社後のミスマッチや早期離職、最悪の場合トラブルの原因になります。目指すべきは「盛る」ことではなく、実際の給与を正しく・魅力的に見せることです。
「時給900円〜」下限のみ表示が応募を減らす3つの理由
給与欄でいちばんもったいない書き方が、下限だけを「〜」でぼかす表示です。「時給900円〜」「月給21万円〜」は一見すると普通に見えますが、求職者の心理には次の3つのマイナスを与えています。
理由1:いちばん低い数字だけが印象に残る
人は最初に見た数字を基準に物事を判断します(アンカリング効果)。「時給900円〜」と書けば、求職者の頭に残るのは「900円」という下限だけです。実際には経験を積めば1,200円まで上がる職場でも、求職者には「900円の仕事」としか伝わりません。上限を書かないことで、自ら安い印象を作ってしまっているのです。
理由2:「〜(チルダ)」が上限不明の不信感を生む
「900円〜」の「〜」は、求職者から見れば「上がいくらまでなのか分からない」という空欄です。「頑張ればいくらでも上がる」という前向きな意味には受け取られず、むしろ「都合の悪い上限を隠しているのでは」という不信感につながります。情報が欠けているほど、人は悪いほうに想像するものです。
理由3:自分がいくらもらえるか計算できず離脱する
下限のみの時給表示では、求職者は「自分が月にいくら稼げるのか」を自力で計算しなければなりません。この「面倒くささ」が離脱を生みます。何十件も比較している求職者は、分かりにくい求人をわざわざ電卓で計算してくれません。「週4×5時間でモデル月収8万円」のように、こちらが計算して見せてあげることが応募への近道です。
ここがポイント
下限のみ表示は「安く見える・隠している気がする・計算が面倒」の三重苦。給与を上げなくても、上限とモデル月収を足すだけで印象は大きく変わります。
【法令】求人の給与記載で必ず守るべきルール
応募を増やす工夫の前に、まず押さえておきたいのが法令上のルールです。給与の書き方は「自由」ではなく、職業安定法などで守るべき最低ラインが決まっています。ここを外すと、応募うんぬん以前に企業の信用問題になります。
求人を出す企業には、職業安定法第5条の3にもとづき、募集時に賃金などの労働条件を明示する義務があります。さらに2024年4月の労働条件明示ルール改正で、就業場所・業務の「変更の範囲」なども明示対象に加わりました。給与欄まわりで特に間違えやすいのが、次の3点です。
| 項目 | 守るべきルール |
|---|---|
| 最低賃金 | 時給・月給を時間換算した額が、勤務地の最低賃金額を下回ってはならない |
| 給与に幅がある場合 | 下限と上限の両方を記載し、幅が生じる理由(経験・能力・資格等)を併記する |
| 固定残業代(みなし残業) | ①固定残業代を除いた基本給 ②固定残業代の時間数と金額 ③超過分は追加で支給する旨——の3点すべてを明示する |
とくに固定残業代(みなし残業)は、金額に含めているのに内訳を書かない求人が後を絶ちません。しかし「基本給25万円」と書きつつ、実は5万円が45時間分の固定残業代だった——というような書き方は、入社後のトラブルに直結します。若者雇用促進法にもとづき、上記3点の明示が求められています。
固定残業代制を採用する場合、募集要項や求人票に「固定残業代を除いた基本給」「固定残業代の計算内容(時間数・金額)」「固定残業時間を超える分は追加で割増賃金を支払う旨」の3点すべてを明示することが求められています。(出典:全国求人情報協会「固定残業制の明示」/厚生労働省リーフレット)
NG表現や法令面をより詳しく確認したい方は、求人広告でNGな表現とは?薬機法・労基法にも触れる注意点もあわせてご覧ください。本記事では、この法令ルールを守ったうえで「どう魅力的に見せるか」に進みます。
応募が増える給与欄の4つの見せ方
ここからが本題です。法令を守りつつ、同じ給与を「応募したくなる見せ方」にする4つの方法を紹介します。どれも金額を1円も上げずにできる書き換えです。
見せ方1:レンジ表示+「幅が生じる理由」をセットで書く
「900円〜」ではなく「950〜1,200円」と、下限と上限をセットで示します。ポイントは、幅が生じる理由を必ず添えることです。「経験・スキルに応じて決定」「深夜時間帯は1,200円」などと理由を書くと、上限が「絵に描いた餅」ではなく「自分にも届く数字」として伝わります。理由のない上限はかえって不信感を生むため、必ずセットで書きましょう。
見せ方2:額面だけでなく「モデル月収・年収換算」を見せる
時給や月給の額面は、求職者にとって「実際の暮らしの金額」に変換しづらいものです。そこで、こちらが計算した「モデル月収」を提示します。「週4日×1日5時間勤務で月収約8万円」「月給25万円=賞与含む年収例350万円」のように書けば、求職者は自分の生活と照らし合わせやすくなり、応募のハードルが一気に下がります。
見せ方3:固定残業代は隠さず誠実に分解して書く
固定残業代がある場合、「基本給25万円(うち固定残業代5万円/45時間分を含む。超過分は別途支給)」のように分解して書きます。一見すると数字が下がって不利に思えますが、誠実に開示している求人ほど、求職者からの信頼は高まります。後から「聞いていなかった」と辞められるより、最初から正しく伝えて納得して入ってもらうほうが、結果的に定着します。
見せ方4:昇給・手当・インセンティブなど額面以外の給与情報を足す
給与欄は基本給だけの場所ではありません。昇給の実績・各種手当・インセンティブ・交通費・まかないなど、額面以外の「もらえるもの」も給与情報の一部です。「昇給年1回(前年度実績+30〜80円)」「交通費全額支給」「まかない1食無料」などを書き添えるだけで、総額としての魅力が伝わります。数字に出ない待遇こそ、しっかり言語化しましょう。
4つの見せ方まとめ
①レンジ+理由 ②モデル月収・年収換算 ③固定残業代の誠実な分解 ④昇給・手当・インセンティブ。給与額はそのままでも、この4つを足すだけで給与欄の情報量と信頼感は一変します。
【ビフォーアフター】給与欄はこう書き換える
4つの見せ方を使うと、給与欄は実際にどう変わるのか。よくある求人の給与欄と、書き換え後を並べてみましょう。時給・月給の金額は一切変えず、書き方だけを直しています。
Before:応募が来ない給与欄
- 時給900円〜
- (上限の記載なし)
- (モデル月収なし)
- 昇給あり(内容の記載なし)
- 交通費規定支給
After:応募が増える給与欄
- 時給950〜1,200円(経験・時間帯により決定)
- 22時以降は時給1,200円(深夜割増)
- 週4日×1日5時間でモデル月収 約8万円
- 昇給年1回(前年度実績:時給+30〜80円)
- 交通費全額支給/まかない1食無料
変えたのは金額ではなく、「どこまで見せるか」だけです。Beforeは下限だけで、求職者は自分の月収も将来の昇給も想像できません。Afterは上限・理由・モデル月収・昇給・手当まで具体的に書かれ、「ここで働いたら月にこれくらい、続ければこう上がる」という未来まで見えます。同じ給与でも、応募数はここまで変えられます。
【相談事例】給与欄を直しただけで応募が2.5倍になった事例
ここで、私たちが実際にご相談を受けたケースをご紹介します。給与額はそのままに、給与欄の書き方だけで応募数が大きく変わった、あるサービス業の例です。
時給は同業他店と同じくらい出しているつもりなのに、この1か月で応募が2件だけ。何を直せば応募が増えるのか、正直もう分からなくて……。
求人を拝見すると、給与欄は「時給900円〜」の一行だけ。実際には経験者や土日・深夜には手当がついて1,200円近くまで上がる職場でしたが、それがまったく書かれていませんでした。昇給制度も、まかないの無料提供もあるのに、給与欄はほぼ空欄同然だったのです。
時給は上げなくて大丈夫です。上限とその理由、モデル月収、昇給の実績、まかないまで、いま実際にある条件を全部書き出しましょう。それだけで印象は変わります。
そこで、時給は据え置いたまま給与欄を全面的に書き直しました。「時給950〜1,200円(時間帯・経験により決定)」「22時以降は1,200円」「週4×5時間でモデル月収約8万円」「昇給年1回」「まかない1食無料」——実際にあった条件を並べただけです。すると、書き換えから3週間で応募が5件(前月比2.5倍)に増え、2名の採用に至りました。動かしたのは給与欄の文章だけ。時給は1円も上げていません。
この事例の教訓
応募が来ないと「給与が安いのでは」と考えがちですが、止まっているのは金額ではなく「給与欄の書き方」であることが非常に多いのです。すでに自社にある条件を、省略せず正しく見せる。それだけで、コストをかけずに応募は増やせます。
やりがちな失敗と、書いたあとの見直し方
最後に、給与欄でやりがちな失敗と、公開後に「どこを見て直すか」をお伝えします。給与欄は一度書いて終わりではなく、反応を見て育てるものです。
やりがちな3つの失敗
①実態より高く盛る…入社後のミスマッチ・早期離職・トラブルの原因に。②下限だけを「〜」で書く…安く見え、隠している印象を与える。③固定残業代を隠す…基本給を高く見せても、あとで発覚すれば信頼を失う。この3つは、応募が来ない・続かない給与欄の典型です。
公開後は、次の観点で数字と原稿を見直すと、どこを直せばよいかが見えてきます。上流(表示)から下流(応募)へ、ボトルネックを1つずつ潰していくイメージです。
- 表示はあるがクリック率が低い → 給与の見出し・タイトルに具体的な数字(上限・モデル月収)を入れる
- クリックはあるが応募率が低い → 給与欄に幅の理由・昇給・手当・モデル月収を書き足す
- 応募後に辞退・早期離職が多い → 給与欄と実態にズレがないか、固定残業代の明示に漏れがないか確認する
なお、給与欄だけでなく原稿全体の構成から見直したい方は応募が増えるアルバイト求人原稿の書き方|今日から直せる7つのコツを、求人タイトル・キャッチコピーの言い回しに悩む方はアルバイト求人のキャッチコピー例30選|業種別テンプレート付きをご覧ください。飲食店で「時給を上げるべきか」と悩んでいる方は時給を100円上げれば応募は来る?アルバイトが集まらない飲食店の現実が役立ちます。本記事は「給与欄の見せ方・書き方」という一点に絞っているため、それぞれの詳細は各記事に譲ります。
求人広告の給与の書き方に関するよくある質問
Q給与に幅がある場合、どう書くのが正しいですか?
下限と上限の両方を記載し、幅が生じる理由(経験・スキル・時間帯・資格など)を併記します。「950〜1,200円(経験により決定)」のように理由をセットで書くと、上限が現実味を持って伝わり、応募につながりやすくなります。上限を書かない下限のみ表示は避けましょう。
Q固定残業代を正直に書くと、応募が減りませんか?
短期的には数字が下がって見えることもありますが、隠して入社後に発覚するほうがはるかに深刻です。早期離職やトラブルにつながり、採用コストが二重にかかります。①基本給 ②固定残業代の時間数と金額 ③超過分は別途支給、の3点を明示することは法令上の要請でもあり、誠実な求人ほど中長期的には信頼され定着します。
Q時給・給与を上げずに応募を増やすことは本当にできますか?
できるケースは多くあります。上限・幅の理由・モデル月収・昇給・手当など、すでに自社にある条件を省略せず見せるだけで、給与欄の情報量と信頼感は大きく変わります。実際に、金額を据え置いたまま給与欄の書き方だけで応募が2倍以上になった事例もあります。まずは「書いていない条件がないか」を洗い出すことから始めてください。
Q月給・年収換算はどこまで書いてよいですか?
賞与や手当を含めた年収例を示すのは有効ですが、「実際に支給される見込みの金額」を書くことが大前提です。好条件のケースだけを年収に換算して大きく見せると、誇大表記としてトラブルの原因になります。「モデル年収」「入社1年目の例」などと前提条件を明記し、平均的な働き方での金額を示すのが安全です。
求人広告の応募数は、給与の「金額」だけでなく「書き方・見せ方」で大きく変わります。金額を上げる前に、まず給与欄に書き漏らしている条件がないかを見直しましょう。
- 「時給900円〜」の下限のみ表示は、安く見え・隠している印象を与え・計算が面倒で応募を減らす
- 法令(最低賃金・幅の上下限+理由・固定残業代の3点明示)を守ったうえで、レンジ・モデル月収・固定残業代の誠実な分解・昇給/手当の4つを足す
- 給与額は変えなくても、すでにある条件を正しく見せるだけで応募は増やせる
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