ネットワークプランニング編集部

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「求人の月給を相場並みに上げたのに、歯科衛生士の応募がまったく来ない」「これ以上待遇を良くしたら、いよいよ経営が苦しい」——歯科衛生士の採用に悩む院長・採用担当者なら、一度はこの葛藤に突き当たったことがあるのではないでしょうか。近隣の医院は月給28万円、うちは26万円。求人を出しても反応がなく、つい「あと1〜2万円上げるしかないか」と考えてしまう。

ですが、結論からお伝えします。月給を上げても、歯科衛生士の応募が思ったほど増えないケースは非常に多いのです。歯科衛生士が集まらない原因は給与だけではなく、勤務時間・休日・教育体制・スタッフ構成・院内の雰囲気、そして求人原稿の見せ方など、給与以外の求人条件に潜んでいることが少なくありません。

この記事では、東京で20年にわたり幅広い業種の求人広告を扱ってきた代理店の視点から、「月給を上げれば歯科衛生士は集まるのか」という問いに正面からお答えします。給与アップの年間コストを具体的に試算し、調査データで「歯科衛生士が職場を決める本当の決め手」を検証したうえで、給与に頼らず応募を増やす求人条件の見せ方までお伝えします。

この記事でわかること

  • 月給を1万円上げると、年間でいくらコストが増えるのか(試算)
  • 調査データが示す「歯科衛生士が職場を選ぶ本当の決め手」
  • 給与以外に応募を左右する6つの求人条件と、その見直し方
  • 給与に頼らない歯科衛生士求人の作り方(ビフォーアフター付き)

月給を上げれば、本当に歯科衛生士は集まるのか

月給を上げれば応募が増える、というのは一見あたりまえに思えます。しかし現場では「上げたのに変わらなかった」という声のほうがむしろ多いのです。なぜなら、歯科衛生士は自院の月給を「単体」ではなく、通える範囲の他院とセットで比較しているからです。

たとえば月給26万円を28万円に上げても、周辺の相場が28〜30万円なら「並んだ」だけで、抜きん出たわけではありません。求職者にとっては依然として「普通の待遇の医院」であり、1〜2万円のアップが応募ボタンを押す決め手になるとは限らないのです。しかも歯科衛生士の有効求人倍率は2.78倍(厚生労働省 job tag・2025年度)という極端な売り手市場。給与だけで勝負しようとすれば、体力のある大手・都市部の医院に押し切られてしまいます。

月給を上げるべきか求人票と電卓を前に悩む歯科医院の院長

よくある落とし穴

「月給を上げたのに応募ゼロ」の背景には、そもそも求人が歯科衛生士に届いていない・原稿から働くイメージが伝わっていないという別の問題が隠れていることがほとんどです。給与は原因の一部にすぎないのに、そこだけ動かしても結果は変わりません。しかも一度上げた基本給はなかなか下げられず、賞与や社会保険料の会社負担分まで含めて、コストだけが固定費として残ります。

だからこそ、月給を上げる前に「本当に給与が原因なのか」を切り分ける必要があります。まずは、月給を1万円上げることが医院経営にどれだけ響くのか——コストの面から具体的に見ていきましょう。

月給を1万円上げると、いくらコストが増えるのか

「たった1万円」と思われがちですが、月給の引き上げは基本給の恒久的な増額です。人数と賞与・法定福利費まで含めると、年間では想像以上の金額になります。感覚ではなく数字で把握しておくことが、冷静な判断の第一歩です。

仮に、常勤の歯科衛生士が3名いる医院で、全員の月給を1万円ずつ上げたとします。賞与を年2か月分(合計14か月分で計算)、社会保険料などの会社負担を給与のおよそ15%とすると、増加コストは次のようになります。

月給を1万円上げた場合の年間コスト増加を示した試算の図解
単位計算増加コスト(概算)
1人・月給+10,000円+10,000円
1人・1年(賞与込14か月)10,000円 × 14か月+140,000円
1人・1年(社保等15%込)140,000円 × 1.15約+161,000円
3人・1年161,000円 × 3人約+483,000円

「1万円」が、3人・1年では約48万円の固定費増になります。これは求人広告を何度か出せる金額です。しかも、月給を上げても応募が増える保証はありません。つまり給与アップは、効果が読みにくいわりにコストが確実に増える——投資対効果の面では、実は分の悪い一手なのです。

参考

厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、歯科衛生士の所定内給与額は月額 約30.7万円、平均年収はおよそ400万円前後とされています。自院の給与がこの相場に対して高いのか低いのかを、まず客観的に把握することが判断の出発点になります。(出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査)

そして重要なのは、そもそも歯科衛生士が職場を決める「決め手」は、必ずしも給与ではないという事実です。求職者側の調査データを見てみましょう。

歯科衛生士が職場を決める決め手は「給与だけ」ではない 見直す6つの求人条件

歯科衛生士の応募は、給与という1点ではなく、複数の求人条件の組み合わせで決まります。求職者は求人を見た瞬間に「ここで働く自分」を想像できるかどうかで、応募するかを判断しています。

参考

歯科医療従事者の働き方に関する調査では、常勤の歯科衛生士が転職した理由として最も多いのが「経営者との人間関係」31.5%、次いで「給与・待遇の面」29.2%、「仕事内容」26.4%でした。人間関係や職場環境が、給与と同等かそれ以上に職場選びを左右していることがわかります。(出典:厚生労働科学研究 歯科医療従事者の働き方と今後の需給等に関する調査研究)

この結果を裏返せば、給与以外で見直せる求人条件を整えるほど、給与に頼らず応募を増やせるということです。歯科衛生士の職場選びを左右する要素を、6つに整理しました。

給与以外に歯科衛生士の応募を左右する6つの求人条件(勤務時間・休日・教育体制・キャリア・スタッフ構成・院内の雰囲気)の図解

①働きやすさに関わる条件(勤務時間・休日・シフト)

歯科衛生士は女性が大半を占め、結婚・出産後も長く働きたいと考える人が多い職種です。そのため「週休2.5日」「土曜午後は休診」「有給が取りやすい」「17時までの時短相談可」といった働きやすさの条件は、給与以上に応募を左右します。「土曜フル出勤が必須」「残業前提」の医院は、それだけで応募できる人が激減します。

逆に「ブランクのある方・子育て中の方も歓迎」「勤務時間・曜日は相談可」と打ち出すだけで、いったん現場を離れた潜在歯科衛生士まで母集団が広がります。働きやすさは、給与をかけずに求人条件の見せ方だけで改善できる領域です。

ここがポイント

「必須条件」を1つ減らすたびに、応募できる人は増えます。本当に外せない条件と、「あれば嬉しい」程度の条件を切り分け、後者は必須にしないだけで応募数は変わります。特に勤務時間・曜日の柔軟性は、潜在歯科衛生士の掘り起こしに直結します。

②成長環境に関わる条件(教育体制・キャリア)

若手や第二新卒の歯科衛生士は「ちゃんと成長できるか」を強く気にします。「先輩がマンツーマンで指導」「セミナー・研修費は医院負担」「予防歯科・SRPをしっかり任せてもらえる」といった教育体制や、認定資格取得の支援は、経験の浅い層にとって給与以上の魅力になります。

ブランクのある復職者にとっても「復帰支援あり」「最新機器の使い方から教えます」という一言は大きな安心材料です。求人票に教育・キャリアの情報が一切書かれていないと、求職者は「入っても放置されるのでは」と不安になり、応募をためらってしまいます。

③人間関係と見せ方に関わる条件(スタッフ構成・院内の雰囲気・求人原稿)

調査で転職理由1位となった「人間関係」は、求職者が最も気にしながら、求人票からは最も伝わりにくい要素です。「20〜30代のスタッフが中心」「歯科衛生士が3名在籍で相談しやすい」「院長が体育会系ではなく落ち着いた雰囲気」など、誰と働くのかを具体的に書くことで、不安が期待に変わります。

そして、その雰囲気を最も雄弁に伝えるのが求人写真です。診療室や外観の写真だけでなく、実際に働くスタッフの笑顔やミーティング風景を載せるだけで、クリック率と応募率は大きく変わります。求人タイトルも「歯科衛生士募集」だけでは他院に埋もれます。「土曜午後休・週休2.5日/ブランクOK/20代活躍中の歯科衛生士」のように、特徴と歓迎条件を具体的に入れると、開かれる回数が変わります。

6つの求人条件のまとめ

応募を左右するのは①勤務時間 ②休日・シフト ③教育体制 ④キャリア支援 ⑤スタッフ構成・人間関係 ⑥院内の雰囲気・求人写真の6条件。多くは給与を1円も上げずに、求人原稿と写真の見直しだけで改善できます。給与を触るのは、この6つを整えてからでも遅くありません。

【相談事例】月給を据え置いたまま応募が集まった歯科医院

ここで、私たちが実際にご相談を受けたケースをご紹介します。月給を上げるべきか悩んでいた、ある歯科医院の院長の例です。

月給を上げるべきか悩み求人広告代理店に相談する歯科医院の院長のイラスト

近隣の医院は月給28万円、うちは26万円。求人を出しても2か月応募ゼロで、もう月給を上げるしかないと思っています。でも、うちの規模ではこれ以上は正直きつくて……。

お話を伺うと、月給は相場から極端に低いわけではありませんでした。問題は待遇よりも、求人写真がユニットチェアの写真だけ、原稿も「歯科衛生士募集・経験者優遇」の一文だけで、どんな人が働く医院なのかがまったく伝わらない点にありました。給与ではなく「見せ方」が止まっていたのです。

月給を上げる前に、求人条件の見せ方を作り直しましょう。ターゲットを子育て中の復職者に絞り、土曜午後休・時短相談可・スタッフの雰囲気を前面に。写真もスタッフの笑顔に差し替えます。

そこで、月給は26万円のまま、ターゲットを「子育てが一段落した復職希望の歯科衛生士」に設定。「土曜午後休・週休2.5日」「勤務時間・曜日は相談可」「ブランクOK・復帰支援あり」「20〜30代スタッフ中心」という訴求をタイトルと本文に明記し、笑顔で働くスタッフの写真を追加しました。すると、掲載から3週間で応募が4件入り、経験者1名の採用につながりました。月給は1円も上げていません。

この事例の教訓

応募が来ないと、つい「給料が低いからだ」と考えがちです。しかし多くの場合、止まっているのは給与ではなく「見せ方」です。同じ月給・同じ医院でも、求人条件の打ち出し方と写真を変えるだけで応募は増やせます。給与を触るのは、最後の手段でよいのです。

給与に頼らない歯科衛生士求人の作り方

応募が来ない求人には共通点があります。それは「誰に向けて」「何が魅力か」がぼんやりしていること。逆に言えば、そこを具体的にするだけで求人は見違えます。ありがちな原稿と、書き換え後の原稿を比べてみましょう。

ありがちな原稿(応募が来ない)

  • タイトル:「歯科衛生士募集」
  • 条件:「経験者優遇・土曜勤務できる方」
  • 仕事:「歯科衛生士業務全般」
  • 写真:ユニットチェア・外観のみ
  • 訴求:特になし(月給だけ)

書き換え後(応募が増える)

  • タイトル:「土曜午後休・週休2.5日/ブランクOKの歯科衛生士」
  • 条件:「勤務時間・曜日は相談可/時短勤務OK」
  • 仕事:「予防・SRP中心。復帰支援あり、機器の使い方から指導」
  • 写真:笑顔で働くスタッフ・ミーティング風景
  • 訴求:働きやすさ・教育体制・20〜30代中心の雰囲気

ポイントは、月給をいじらずに「誰に・何を・どう見せるか」を具体化しただけ、という点です。この書き換えは、次の手順で誰でも進められます。

来てほしい人を1人に決める

「子育て中の復職者」「新卒・第二新卒」「予防歯科を極めたい人」など、まず狙う層を1つに絞ります。全員向けの原稿は誰にも刺さりません。

その人に響く強みを言葉にする

勤務時間・休日・教育体制・人間関係・雰囲気など、給与以外の強みを洗い出し、ターゲットが重視する順に並べます。

タイトルと写真に反映する

強みをタイトルの先頭と冒頭に置き、写真も「その人が働くイメージ」が湧くスタッフの笑顔へ差し替えます。

応募後の連絡体制を整える

売り手市場の歯科衛生士は複数院を同時に検討します。当日〜翌日に一次連絡を返す体制をつくり、他院への流出を防ぎます。

この4ステップは、月給を上げるより先に着手すべき順番です。給与以外にも応募が来ない原因を網羅的に確認したい方は、歯科衛生士の求人に応募が来ない!歯科医院が見直すべき7つのポイントもあわせてご覧ください。本記事の「給与」の話を含む7つのポイントを、院長目線で整理しています。

それでも月給を上げるべきケースと、その前にやること

ここまで「給与は最後の手段」とお伝えしてきましたが、月給を上げるべき明確なケースも存在します。それは、近隣の同規模の医院と比べて月給が明らかに見劣りしている場合です。相場より2〜3万円低いまま放置すれば、いくら求人条件を工夫しても比較段階で候補から外されてしまいます。

月給を上げる前に確認すべきこと

月給を上げる判断は、必ず近隣相場の確認とセットで行ってください。相場を知らずに上げると「上げすぎ」でコストだけ増えたり、逆に「上げても相場に届いていない」で効果ゼロになったりします。感覚ではなく、同エリア・同規模の歯科医院の求人を実際に見て判断しましょう。

月給を上げる前に、次のチェック項目を確認してみてください。これらが未着手のまま給与だけ上げても、費用対効果は上がりにくくなります。

  • 近隣の同規模医院で月給・時給の相場を実際に確認したか
  • 「誰に来てほしいか」を1つの層に絞れているか
  • タイトルに歓迎条件(土曜休・ブランクOK・時短相談可等)が入っているか
  • 写真に「働くスタッフの様子」が写っているか
  • 応募に当日〜翌日で連絡できる体制があるか

これらを整えたうえで、なお相場に対して月給が低いなら、そこで初めて給与アップを検討します。順番を守ることが、限られた予算を最も活かすコツです。

歯科衛生士の給料と採用に関するよくある質問

Q月給を上げるかどうかは、何を基準に判断すればいいですか?

A

まず近隣の同規模医院で月給・時給の相場を確認してください。相場より明らかに低ければ上げる検討価値がありますが、相場並みなら給与以外(勤務時間・休日・教育体制・人間関係・求人写真・原稿)の見直しを先に行うほうが費用対効果は高くなります。

Q歯科衛生士の給料相場はどのくらいですか?

A

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、歯科衛生士の所定内給与額は月額およそ30.7万円、平均年収は400万円前後です。ただし地域差が大きく、都市部ほど高い傾向があります。自院の給与がこの相場に対して高いか低いかを、まず客観的に把握することが判断の出発点になります。

Q掲載して何日応募がなければ見直すべきですか?

A

目安として2〜3週間反応がなければ一度見直します。まず表示回数を確認し、見られていないなら媒体・ターゲットを、見られているのに応募がないなら写真・タイトル・求人条件の見せ方を改善します。月給を動かすのはそのあとで十分です。

Q小規模の個人医院は大手・都市部に給与で勝てないのですが、採用は無理ですか?

A

給与だけで比べれば不利でも、勝負する土俵を変えれば十分に採用できます。院長との距離の近さ、勤務時間の融通、少人数ならではの相談しやすさ、腰を据えて予防歯科に取り組める環境は個人医院の強みです。これを刺さる相手(復職者・ワークライフバランス重視層など)に向けて打ち出すことが鍵になります。

月給を上げても、歯科衛生士の応募が増えるとは限りません。給与は最後の手段と考え、まず給与以外の求人条件を見直すことが、歯科医院の採用を成功させる近道です。

  • 月給+1万円は常勤3人・1年で約48万円の固定費増。効果が読みにくいわりにコストは確実に増える
  • 調査が示す転職理由1位は「人間関係」。給与以外の6条件(勤務時間・休日・教育・キャリア・スタッフ構成・雰囲気)を整えるほうが効く
  • 「誰に・何を・どう見せるか」を具体化して求人を作り替えれば、月給を上げなくても応募は増やせる

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