
「常勤の歯科衛生士を募集しているのに、何か月も応募が来ない」——そんな状態が続いていませんか。全国の歯科医院がフルタイムで働ける即戦力を奪い合っているいま、常勤だけを追い続ける採用は消耗戦になりがちです。
そこで見直したいのが「パート採用」という選択肢です。ただし、ただ「パート募集」と出すだけでは応募は増えません。カギは、午前だけ・週2〜3日・扶養内といった勤務時間と曜日の柔軟性を"求人条件として設計する"ことにあります。
本記事は、子育て世代の歯科衛生士に選ばれるパートの勤務条件をどう作り、採用後にどうシフトへ組み込むかを、採用側の実務目線で解説します。ブランクや復職への不安の解消は別記事に譲り、ここでは「勤務条件の詳細設計」に絞ってお伝えします。
この記事でわかること
- なぜ今「パート採用」が歯科衛生士確保の突破口になるのか
- 扶養内(2025年改正後の年収の壁)から逆算する時給・勤務時間の考え方
- 午前だけ・週2〜3日など、子育て世代に選ばれる勤務条件のパターン
- 常勤退職の穴を午前パート2名で埋めた歯科医院の相談事例
- 採用後の既存スタッフとのシフト調整・診療体制への組み込み方
私たちネットワークプランニングは、求人広告代理店として20年以上、歯科医院をはじめ幅広い業種の採用を支援してきました。歯科衛生士の求人では「常勤募集で空振りが続いていた医院が、勤務条件をパート向けに設計し直しただけで応募が集まり始めた」というケースを数多く見ています。本記事はその現場知見をもとにまとめました。
なぜ今「パート採用」が歯科衛生士確保の突破口なのか
常勤フルタイムだけを追う採用は、最初から母集団を狭めています。
歯科衛生士は医療職のなかでも特に採用が難しい職種です。まずは「今、どれだけの売り手市場なのか」を数字で押さえておきましょう。

常勤だけを追うと母集団が狭すぎる
歯科衛生士は全国的に「超売り手市場」です。新卒歯科衛生士の求人倍率は20倍を超える水準とされ、1人の有資格者を何十もの医院が取り合っている状態が続いています。この土俵で「経験者・常勤フルタイム」だけを条件にすると、最初から狭い層を全国の医院と奪い合うことになります。
さらに、免許を持ちながら働いていない人が非常に多いのも歯科衛生士の特徴です。厚生労働省の統計では、免許登録者の半数近くしか実際には就業していません。この未就業層の多くは、フルタイムでは働けないがパート・時短なら働ける子育て世代です。
厚生労働省「衛生行政報告例(就業医療関係者)令和4年度」によると、歯科衛生士の免許登録者数は約31万人に対し、就業者数は約14.5万人(就業割合46.2%)。差し引き約17万人が有資格でありながら就業していません。この潜在層の多くが、勤務時間の融通が利けば働ける層です。
出典:厚生労働省「衛生行政報告例(就業医療関係者)」
子育て世代は「働き方」で職場を選ぶ
常勤経験者を高い給与で釣り合う競争に、体力のある大型医院や法人が有利なのは事実です。一方で、個人経営の医院でも十分に戦えるのが「働き方の柔軟性」という土俵です。
子育て中の歯科衛生士は、給与の高さよりも「送り迎えに間に合う時間か」「学校行事で休めるか」「扶養の範囲で働けるか」を優先します。ここに条件を合わせられる医院は、給与の高さを競う土俵とは別の軸で選ばれます。
ここがポイント
常勤経験者を給与で奪い合うより、まだ多くの医院が本気で設計していない「パート・時短の勤務条件」で間口を開くほうが、採用成功の確率は高くなります。応募が来ないのは人がいないからではなく、来てほしい人の働き方に合った条件を出せていないからです。
扶養内から逆算する時給・勤務時間の設計
子育て世代のパート希望者にとって、最大の関心事のひとつが「扶養の範囲で働けるか」です。採用側がいわゆる「年収の壁」を正しく理解しておくと、時給と勤務時間を無理なく設計でき、求人票でも的確に打ち出せます。

2025年改正後の「年収の壁」を採用側が押さえる
2025年(令和7年)の税制改正で、いわゆる「年収の壁」は大きく動きました。パート採用の条件設計に関わる主なポイントを整理します。ただし制度は改正・運用変更が続く分野のため、実際の設計時は最新の公的情報を必ず確認してください。
| 壁の種類 | 目安の金額 | 採用条件への影響 |
|---|---|---|
| 所得税がかかり始める壁 | 約160万円(改正で引き上げ) | 本人に所得税が発生し始める目安 |
| 配偶者控除(扶養)の壁 | 約123万円(改正で引き上げ) | 配偶者の扶養の範囲として意識されやすい |
| 住民税の壁 | 約110万円(改正で引き上げ) | 住民税が発生し始める目安 |
| 社会保険の壁 | 106万円・130万円(据え置き) | 勤務先規模や労働時間の要件により加入義務が発生 |
2025年の税制改正では、基礎控除・給与所得控除の見直しにより所得税がかかり始める水準や配偶者控除の要件が引き上げられました。一方、社会保険(106万円・130万円)の壁は据え置かれています。金額や要件は最新の制度で変わる可能性があるため、条件設計の際は国税庁・日本年金機構等の公的情報をご確認ください。
参考:国税庁
壁から逆算して時給×時間×日数を決める
子育て世代の多くは「扶養の範囲に収めたい」という希望を持っています。そこで、応募者が意識する年収の目安を起点に、時給・1日の勤務時間・週の勤務日数を逆算するのが実務的です。
たとえば扶養の範囲を意識する応募者であれば、「時給が高いほど働ける時間は短くなる」という関係になります。時給を上げること自体は魅力になりますが、扶養内希望者にとっては"働ける時間の上限"を一緒に提示できるかどうかが安心材料になります。
注意点
年収の壁の金額・要件は改正が続いています。求人票に具体的な金額を断定的に書くより、「扶養内勤務の相談可」「勤務時間はご希望に合わせて調整します」といった柔軟な表現にしておくほうが、後のトラブルを避けられます。個別の税・社会保険の判断は応募者本人・専門家の確認に委ねる前提で案内しましょう。
子育て世代に選ばれる勤務条件のパターン設計
ここからは、実際にどんな勤務条件を用意すれば子育て世代に選ばれるのかを具体的に見ていきます。ポイントは「時間」「曜日」「休みやすさ」の3つを、それぞれ求人条件として明確に設計することです。

午前だけ・時間帯を区切る
子育て世代が最も反応するのが「午前だけ」「◯時〜◯時」と時間帯を区切った募集です。保育園や小学校の送り迎えの時間に働けることが明確になると、応募のハードルが一気に下がります。
診療のピークである午前帯にパートを厚くすれば、常勤が手薄になりがちな時間の診療補助・メンテナンスを回せます。「フルタイムで1人」より「午前だけで2人」のほうが、実は診療のボトルネックを解消しやすいケースは少なくありません。
週2〜3日・曜日固定と曜日相談
「週2〜3日から相談可」と明記すると、扶養内で働きたい層・他院と掛け持ちしたい層の両方に届きます。曜日は、医院側が埋めたい曜日を「固定」で示すパターンと、応募者の都合を聞く「相談可」のパターンを併記すると、幅広い希望に対応できます。
学校行事・急な発熱への配慮を"条件"にする
子育て世代が退職・応募辞退する大きな理由が「子どもの用事で休みづらい」ことです。ここを求人の"条件"として先に示せるかどうかが差になります。
- 「お子さんの急な発熱・行事での休み・時間変更に対応します」と明記する
- 午前のみ・午後のみなど、複数の時間帯パターンを用意する
- 「週2日〜」と下限を低く見せ、増やせる余地も添える
- 曜日固定と曜日相談の両方を提示する
- 扶養内勤務の相談可であることを書く
応募が集まりにくい条件
- 「常勤・フルタイムのみ」
- 勤務時間・曜日が固定で相談不可
- 休みやすさの記載がない
- 扶養内で働けるか不明
応募が集まりやすい条件
- 「午前だけ・週2〜3日から相談可」
- 時間帯・曜日を選べる
- 「急な休みに対応」と明記
- 「扶養内勤務OK」と明記
【相談事例】午前パート2名で常勤退職の穴を埋めた歯科医院
ここで、私たちが実際に支援した相談事例を紹介します(医院が特定されないよう内容は一部変更しています)。都内の一般歯科で、長く勤めた常勤の歯科衛生士が退職し、後任の常勤募集を出しても応募が来ない、というご相談でした。
常勤の衛生士が辞めてしまい、募集しても応募がゼロです。メンテナンスの予約を減らすしかないのでしょうか…。
常勤1名にこだわらず、午前だけ・週3日のパートを2名に分けて募集してみませんか。診療が混む午前帯を厚くすれば、予約枠は十分に維持できます。
求人の打ち出しを「常勤募集」から「午前のみ・週3日〜・扶養内相談可・急なお休みにも対応」に変えたところ、掲載から約3週間で複数名の応募が入りました。結果として、それぞれ別の曜日・午前帯に入れる子育て世代のパート2名を採用できました。
2名で曜日を分担したことで、常勤1名が抜けた午前帯のメンテナンス枠をほぼ元通りに戻すことができました。さらに、どちらかが子どもの用事で休む日も、もう1名や常勤スタッフでカバーしやすくなり、「1人に依存しない体制」という副次的なメリットも生まれました。
この事例の学び
- 「常勤1名」を「午前パート2名」に分解すると、応募の母集団が一気に広がる
- 診療が混む時間帯に人を厚くすれば、予約枠は維持できる
- 複数名体制は、急な休みへの相互カバーと属人化の解消につながる
採用後がカギ|既存スタッフとのシフト調整と診療体制への組み込み方
パート採用は「採用して終わり」ではありません。むしろ、既存スタッフとのシフト調整と診療体制への組み込みを設計できるかどうかが、定着と現場の納得感を左右します。特別なシステムがなくても、次の考え方で十分に回せます。

シフトは「アポイント枠」から逆算して組む
パートを何曜日の何時に入れるかは、スタッフの都合だけで決めるとうまくいきません。まず「どの時間帯の予約枠を埋めたいか」を先に決め、そこにパートの勤務時間を当てはめます。メンテナンス需要が集中する曜日・時間帯を可視化し、そこを厚くするのが基本です。
担当制ではなく業務単位で引き継ぐ
パートは勤務日が限られるため、患者を固定で担当する「担当制」は引き継ぎが滞りがちです。リコール・スケーリング・TBIといった業務単位で任せ、記録と申し送りをカルテやチャットに残す運用にすると、勤務日が違うスタッフ同士でもスムーズにバトンを渡せます。
曜日・時間帯ごとの予約需要とスタッフの過不足を可視化し、パートに入ってほしい枠を明確にする。
「午前だけ」「週◯日」の希望を、埋めたい枠に合わせて配置。複数名なら曜日を分担させる。
担当制にせず業務単位でアサイン。申し送りを記録に残し、勤務日の違うスタッフ間でも連携できるようにする。
既存スタッフの不公平感をなくすルール化
パートを受け入れるとき、既存の常勤スタッフが「自分ばかり負担が増える」と感じると、現場がぎくしゃくします。事前に役割分担と休み時のカバー方法をルールとして共有しておきましょう。
パート受け入れでありがちな3つの失敗
- 教育担当を決めない:勤務日が限られるパートほど、誰に聞けばいいか分からない状態は不安です。窓口となる担当を1人決めましょう。
- 雑務だけを押し付ける:資格職であるパート衛生士に片付けや雑用ばかり任せると、やりがいを失い早期離職につながります。
- 急な休みのカバーを決めていない:子どもの発熱時などの穴埋めルールがないと、休むたびに気まずさが生まれ定着しません。
パート採用で応募を集める求人票の見せ方
どれだけ良い勤務条件を用意しても、それが求人票で伝わらなければ応募にはつながりません。パート希望者は「自分の生活リズムで働けるか」を具体的に読み取ろうとします。
「勤務時間は応相談」だけでは不十分です。午前だけ・週2〜3日・扶養内可といった具体的な選択肢を明記し、休みやすさまで書いて初めて「自分でも働けそう」と感じてもらえます。求人票に盛り込むべき項目をチェックリストにまとめました。
- 勤務時間帯の具体例(例:9:00〜13:00など)を明記する
- 「週2日〜」など下限と、曜日固定/相談の可否を書く
- 「扶養内勤務OK」「時間はご希望に合わせて調整」と添える
- 「お子さんの急なお休み・行事に対応」と休みやすさを書く
- 任せる業務(リコール・スケーリング等)と教育体制を示す
- 一緒に働くスタッフの人数・年齢層など職場の雰囲気を伝える
求人票そのものの作り込みについては、歯科衛生士の求人票の書き方|応募が集まる募集条件と記載のコツで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Qパートの歯科衛生士に診療のどこまで任せられますか?
資格職ですので、リコール・スケーリング・TBI・PMTCなど、常勤と同じ範囲の業務を任せられます。勤務日が限られる点を踏まえ、患者固定の担当制ではなく業務単位でアサインし、記録・申し送りで引き継ぐ運用にすると回しやすくなります。
Q午前だけ・週2〜3日で診療は回りますか?
混み合う午前帯に人を厚くする発想なら十分回せます。「常勤1名」を「午前パート2名」に分解すると、予約枠を維持しながら急な休みへの相互カバーもしやすくなります。まず埋めたいアポイント枠を洗い出し、そこに勤務時間を当てはめるのがコツです。
Q扶養内希望者の時給はいくらに設定すべきですか?
時給は地域相場を踏まえて設定しますが、扶養内希望者にとっては「働ける時間の上限」とセットで示すことが重要です。年収の壁は2025年改正で動いており、金額や要件は変わる可能性があるため、求人では「扶養内勤務の相談可」といった柔軟な表現にし、個別の判断は本人・専門家の確認に委ねる前提で案内しましょう。
Qパートと常勤、どちらを優先して募集すべきですか?
常勤に固執して長期間応募が来ない状態なら、まずパート・時短で間口を広げることをおすすめします。パートで入った方が生活の変化に合わせて勤務時間を増やし、後に常勤へ移行する例もあります。「まずは短時間から、慣れたら増やせる」制度にしておくと双方に無理がありません。
まとめ:勤務条件を設計すれば、パート採用は動く
歯科衛生士の採用は、常勤フルタイムを奪い合うだけが道ではありません。勤務時間と曜日の柔軟性を"求人条件として設計する"ことで、子育て世代という大きな母集団に届きます。
- 常勤だけを追うと母集団は狭い。パート・時短で間口を広げる
- 扶養内(2025年改正後の年収の壁)から時給・時間・日数を逆算する
- 午前だけ・週2〜3日・休みやすさを"条件"として具体的に設計する
- 採用後はアポイント枠から逆算してシフトを組み、業務単位で引き継ぐ
「常勤募集で応募が来ない」という段階でつまずいている場合は、そもそもの募集ターゲットと勤務条件を見直すことが先決です。応募が集まらない原因の切り分けについては歯科衛生士の求人に応募が来ない!歯科医院が見直すべき7つのポイントを、ブランクのある復職層の受け入れについてはブランクのある歯科衛生士を採用するには?復職しやすい歯科医院の条件もあわせてご覧ください。
どんな勤務条件にすれば自院に合う人材が集まるのか、どの媒体でどう打ち出せばパート層に届くのか——具体的な設計でお困りの際は、求人広告代理店である私たちにお気軽にご相談ください。歯科医院の採用支援の実績をもとに、最適な条件設計と原稿づくりをご提案します。
求人広告のご相談・お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。